訪問者

悪戯がき

彼女はやって来て悪態をつきまくる
身体をくねらせて大声で泣き喚き
終いには僕に「死ね」と言う
汚い言葉だと言う僕に手に取れるもの全てを投げつけてくる
それでも出勤時間は近づいて
どうにも押さえる事ができぬまま会社へ向かう
至る所であらゆる事柄が彼女の気分を害し
彼女をより凶暴にしていく
僕ひとりでは飽きたらず 目につくもの全てに呪詛を吐く
いい加減うんざりしてしまって
なだめる事も眺める事も止めてしまうと
しくしくとさも悲しげに彼女は泣くのだ
けれどそこで同情しようものならば
彼女の怒りは倍になって僕に降り掛かる
「それじゃあどうしたらいいんだ?」
バカみたいだと自覚はしているんだ
けれども至極真っ当な質問だろう?
「あんたバカよ 死んだらいいのよ」
そうして彼女も至極真っ当と思える答えを返す
どうしようもないループなんだ
いつでも彼女は暴れ喚き叫びブラックホールにでも向かって腹を立て続ける
僕には何もする術がない
大体彼女はそれだけの為に存在するのだ
僕に迷惑をかける為に
僕を不快にする為に
僕を諦めさせる為に
僕を不能の木偶と思わせる為に


そうして彼女はまた
ある日いなくなるのだ