熊をさがす

古い知り合いがいまして。こちらが一方的に知っているだけと言えばそうなのですけれど。熊なんですけれど。ちょっと大きな神社があって、その周りに公園があって、公園に小さな遊園地があって、遊園地と言ってもデパートの屋上にある程度の乗り物しかないような遊園地兼公園なのだけれども、そこの隅に寂れた動物園があって。と思ったら、きれいに整備されて手が加えられていたのだけれど、私の記憶では寂れていて、熊がいたのだけれど、ツキノワグマが。ノイローゼ気味の。獣医でない私が見てもノイローゼ気味と思うような熊だったのだけれど。その熊をちょっと見てみたいと思って行ったのだけれど。居なくなっていた。多分、死んだのだと思う。最後に見たのは10年前位だから、熊の寿命は知らないけれど、ノイローゼ気味の熊がそう長生きするとも思えない。新しい熊は小さくて健康そうに檻に閉じ込められていたけれど。どこかの知らないおばさんが昔の熊について話していて、「そうそう、その熊、私も知ってますよ」と話しかけたくなったけれど、知ってどうするとも思ったので黙って熊を眺めて猿を眺めてリスを眺めて鳥を眺めて鹿を眺めてブチハイエナを眺めて、どれもこれもさぞ不機嫌だろうと思って、檻を全部ぶち壊す想像だけして、この動物園はどこの金で成り立っているんだろうと考えながら駅に向かう。